東京の夜

ゆったりとした服を着て、サンダルを履き、文庫本をポケットに突っ込み家をでる。
暖かい風が身を撫でる。路上ライブやスケボーの輩、酩酊し暴言を吐く者、ろくでもない人間の住むこの街は、それでも、活力に満ちていているように思う。皆、金は無くともそれなりに幸せそうなのだ。そういうひとつひとつの要素が作り出す巨大なエネルギーみたいなものが、この街の独特な雰囲気を形成しているのだと思う。引っ越してから4カ月が経ち、自分自身をこの街に馴染ませていくことはそれなりにできたと思うけど、やはり少し性に合ってないのかもしれない。雪の降る夜のような無音の静けさが欲しい。そんなものを求めている時点で、東京には向いていないのかもしれない。

深夜のマクドナルド。ふと窓の外へ目をやる。
人の少なさと派手しいネオン。真夜中の都会の空虚さ。そういえば、この街がこんなにも静かなのはほんの数時間だけだ。あと少しで高架化された中央線を電車が絶え間なく行き来し、駅は人混みで溢れ、騒音に包まれる。
ゆったりと流れる時間、おそらくは人生でそう多くは無い時間、大切にしないとなと思う。